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編集者ノート(No.2)

2018年7月29日


移民政策~安易な外国人依存でなく、日本全体で規制緩和、生産性向上が不可欠

安倍晋三首相は24日の関係閣僚会議の初会合で、外国人労働者の受け入れ拡大を指示した。秋の臨時国会に入国管理法改正案を提出し、年内に日本語教育や生活支援の総合対策をつくる。法務省入国管理局を外局となる庁へ格上げし、体制を整える。2019年4月の本格受け入れを目指し政策を総動員する。外国人労働者の受け入れ政策は大きな転換点を迎えた。(日経新聞電子版30.7.25)

日本が直面する課題と移民問題

  1. 慢性的な人で不足の解決の手段としての移民。

    留学生などのサービス業(コンビニ、居酒屋)でのバイトなど不足する労働力のカバーや看護師、介護士、家事代行などに加え今回の移民拡大政策だ。しかし、これは低賃金労働を維持するための一時的な政策にすぎない。

    移民が増えても国全体の経済的な富はほとんど変わらない。米国などは、移民の力で世界一の国家になったと言われるが現在では移民大国ドイツでも移民による経済力拡大とはなっていない。移民による消費の拡大はプラスだが、移民への医療費や社会保障費の増大などでプラスマイナスほぼゼロである。

    内閣府は「2030年の目指すべき未来として1億1千万人の人口維持させるために出生率2.07(1.46/2015年)にし、毎年20万人移民を受け入れが必要としている。出生率の回復が無ければ永遠に移民を受け入れることになる。

    世界中で移民問題が各国の社旗不安を引き起こしている中、政府の安易でなし崩し的な移民政策は日本にとって極めて危険と言えるだろう。日本の国益の立場に立ち、日本人はどうあるべきか、多民族国家を目指すのか?戦略的な国民的議論が必要だ。



  2. 低賃金移民に頼らず、国力を増す方法は、存在する。

    国家総がかりの岩盤規制と日本型官僚主義を破壊し、全国的な規模での規制緩和による生産性向上である。そのためには、各産業での規制に甘んじて生きてきたゾンビ企業を「退場」させる。特殊権益を与えてきた規制を撤廃し、自由競争を全国的に展開させることだ。経済が活性化して、日本の富が増大すれば、余剰な資金で保育施設の拡充で新たな出産、育児が増えることは明らかだ。

    日本経済のいちばんの問題は労働生産性が低いことで、OECD35ヵ国中21位、先進7ヵ国のなかではずっと最下位だ。一人あたりの労働者が生み出す利益(付加価値)は8万1777ドル(約834万円)で、アメリカの労働者(12万2986ドル)の7割以下しかない。



  3. 我々輸出入通関業会では昨年歴史的な法律改正があった。

    明治以来の9か所の税関で夫々の中でしかできなかった申告許可が、全国どこからでもどの税関へも申告ができるようになった。従来、9税関が存在する港や空港で地元の通関業者が独占的に行っていた通関業務が事実上自由化された。

    しかし、財務大臣が認定したAEO通関業者は、貨物蔵置税関でなくても、申告税関を選択し申告ができるというメリットがある。AEO通関業者以外も、どこからでも申告ができるが、貨物蔵置税関官署に限られる。

    今までは9税関全てで輸出入申告するためには、9税関管内で通関営業所と2人以上の通関士が必要だった。極端に言えば、18人必要な通関士が3‐4人位で済むのだ。

    蔵置官署で書類説明、検査立ち合いの人間が必要だが、通関士でなく社員または現地雇用の人でOKだ。いままで同一税関でしか通関業ができなかった社が、全国展開できるのだ。ものすごい規制緩和だ。通関に係る料金も自由化された。規制緩和と自由化で、業者間のサービス競争で輸出入業務は活性化したか?


    しかし、事実は逆だ。


    長い間、仕事場所の規制が続き、料金が決められ、需給調整があり、自由競争がなかったので、ほとんどの通関業者は、同一地域の中での固定した顧客との一定した仕事量に満足し業務拡大をしようとしていない。逆に、広域で通関業務が可能となり、通関士の減員を検討している。例えば横浜に10人、東京に10人いる通関士は、一か所に統合すれば半数はいらない勘定になる。通関士にとって、規制緩和が最大のチャンスのはずが最大のピンチになる可能性がある。


通関士の個人営業認可が輸出拡大の切り札だ


申告官署の自由化という規制緩和の次は、通関士の個人営業許可という規制緩和で、日本全国の中小企業の輸出入のすそ野を拡大してゆくべきだ。
ドイツの輸出の7割が先進国向けで、同じく7割が200ドル以下の低中価格帯品だ。輸出規模は日本の2倍(1.4兆ドル)である。
政府・財務省が輸出拡大による経済活性化を掲げるなら、輸出入業務の次なる規制緩和=通関士個人営業の認可が必要不可欠である。
航空便のSP(スモールパッケージ)の延長にある商品であり、既存の通関業者が取り扱いことは難しいからだ。

(佐藤)