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2024年賀正、辰年を昇って行こう〜天災・事故の教訓を活かして〜

2024年1月7日


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通関士の皆様、海外貿易業務担当者の皆様

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今年は、元日から、能登半島地震が発生しまして、1月7日現在で、死者行方不明が100名を超えました。なお200名を超える方々の安否が不明となっています。戦後の地震・津波被害で

死者・行方不明者が100名以上となったのは、9例目とのことです。

お亡くなりになった方々と親族の方々に心よりの哀悼の意を表します。

翌日2日、今度は、羽田空港でJAL機と海保機の衝突炎上事故があり、海保機の5名が死亡しました。死亡された方々のご冥福をお祈りいたします。JAL機の乗客367名は全員無事でした。本当に良かったです。

小生は、通関士として40年間働く中で、どうすれば申告ミスを無くし、迅速で正確な輸出入通関ができるかを考えていましたが、その過程で、地震・津波の発生原因、教訓、また航空機事故の発生原因、教訓などの研究しまして、特に、ヒューマンエラーの発生原因と教訓、対策

について多くの知見を得ることができました。

毎日何十件から何百件の通関書類を処理する中で、税関のNACCSシステムや社内システムの力を使うにしても、最後は通関士や実務担当者が判断し決定するので、ヒューマンエラー発生の可能性が高まります。

様々なヒューマンエラーの教訓で、単純で明確な基準があることが分かりました。

【ヒューマンエラーのレベルと大事故発生原因】

1.通関業務の場合

①客先担当者など受付た書類そのもののミス(見落とし)

⭐️日常業務で発生する。
②実務担当者のミス(見落とし)

⭐️日常業務で発生する。

③チェッカーマンのミス(見落とし)

⭐️①または②のミスを発見できない。→事故の発生

④実務責任者(Wチェッカー)のミス(見落とし)

⭐️③のチェックミスの見逃し→大事故の発生

(例)関税法違反など誤謬事故、不積事故発生など

通常の通関業務で発生することなのでたいしたことないと思われるかもしれませんが

これを過去の世界の航空機大事故の例で検証したみましょう。

2.搭載した酸素発生装置のチェックミスで航空機火災墜落で110人死亡

1996年5月11日午後2時13分、フロリダ州マイアミからジョージア州アトランタに向かっていたA社航空A便(B社製B型機)が、離陸10分後、火災のため空港から19Kmのエヴァーグレーズ湿地帯に墜落した。この事故で運航乗務員2名、客室乗務員3名、乗客105名、計110名全員が死亡した。酸素発生装置(酸素ボンベ)のラベル表示ミスが原因であった。

離陸直後、誤って搭載されていた酸素発生装置が発熱したことにより火災が発生した。同機はA社航空では可燃性物質の搭載を基本的に禁じているが、144本の酸素発生装置は空ではないのに「空」だという誤ったラベルが添付され、搭載されてしまった。

直接の原因は、下請けの整備会社C社による酸素発生装置のラベル表示ミス。C社の整備員は、空のラベル表示を見ただけで、装置の安全ピンがはずいれていたのに中味を確認しなかった。にもかかわらずA社航空従業員に口頭で「空だった」と報告。確認を怠ったA社航空にも非がある。貨物室に煙検知器が搭載されていなかったことも大きな要因のひとつだった。

【大事故になった原因】

①C社の整備員のラベル表示ミス 

②A社航空従業員の確認ミス

③貨物室に煙検知器が搭載されていなかったことも大きな要因のひとつ。

④監督者であるべき連邦航空局が、業界の「パートナー」としてA社など新規会社の支援を優先、厳しい安全監視をしていなかった。

連邦航空局の安全より企業利益最優先の考えが、A社A便を炎上爆発させる結末に至った。過去3年間にA社の航空法違反件数は34を超え、人命に関わるトラブルも続発していた。連邦航空局はA社が大惨事を起こすのは時間の問題であることを随分前から知っていたが、安全よりも航空業界との癒着を優先することで、その事実をひたすらに隠し通していた、と運輸省監察総監 A氏は内情を暴露。

【結論】

①のミスを②で止めていれば、また、③が設置されていれば、事故発生はなかっただろう。

④航空運輸局がしっかり航空会社への安全監査・教育していれば①のミスも起こらなかっただろう。ミスの積み重ねこそ重大事故の発生原因であると確信します。

3.1月2日の羽田空港でのJAL機と海保機の衝突炎上事故への一考察

【事故発生原因】

①海保機の管制官の指示(滑走路手前まで進む)を「誤認」して滑走路に入った。

②管制官はJAL機に着陸許可を出した。

③管制官は海保機が滑走路上にいることを認識していなかった。

④管制官のモニターがあり、海保機が滑走路にいるという赤く表示されていた。

管制官が見落としたとされる。

⭐️モニターは管制官が直接見れる位置になかったとの情報もある。

【あるべき改善策】

防いだ大事故防げなかった大事故

衝突したJAL機には367名搭乗していたが、客室乗務員の誘導で脱出用シューターで

脱出して全員無事でした。世界のマスコミも奇跡と呼んだほど、鮮やかな脱出でした。

機体の左側のドアは火災のため開けられず、右側から脱出しました。慌てて左側のドアを開けるとどっと火の粉が客室内に入るので、とても危険な判断です。乗客がパニックになり「早く開けて」と絶叫している中で、全員避難90秒の訓練をいつも行なっている世界一のクルーに感謝感激です。弊社にご登録の元客室乗務員の通関士様から避難訓練の様子をお聞きしましたが、全く同じ回答でした。機体に火が回ってくる中、最後に機長がシューターで降りる姿には

感動しました。

同様に、パイロットは、着陸やり直し(ゴーアラウンド)や着陸後即飛び立つ(タッチアンドゴー)の訓練を常に行なっており、管制官がモニターに気がつき、JAL機に着陸許可を取り消しゴーアラウンドを指示できたのではないかと思います。

ただし、国交省が即、モニターを監視する管制官を増員したところを見ると、人手不足を認識していた可能性があります。

⭐️1月7日現在でのマスコミ報道での状況把握です。

今回の我々への教訓は、

1.あらゆるレベルの「事故は起こり得る」ということを再認識し、シュミレーションする。

2.事故を最小限度に止めるための二重三重の重層的なチェック体制を持つこと。
3.絶対に守るべき法令遵守のチェック体制については、経営責任者とも情報を共有化して

人員も含め不正防止の最高のチェック体制を作る。

全ての通関業者様は、通関士様を中心に関税法関連法規や通関行法の遵守にて通関業務を行なっていると思いますが、重大な法令違反があると会社経営にも即、影響が出ます。

ぜひ、このような重大事故の事例を他山の石として教訓としていきたいと思います。

今年も、アデプタスは通関士様、海外貿易担当者様そして貿易関係企業様を全力でサポートしてまいります。よろしくお願い致します。(文責 佐藤健一)