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消費税10%への引き上げの発表について考えました。

2018年10月31日


安部首相は来年10月から消費税の10%への引き上げを発表しました。

輸出入に絡む2点から、日米の比較をしつつ考えていきます。

日本の関税法では、関税及び消費税は貨物の輸入通関時「貨物を輸入する日」までに支払うことになっています。


第九条 納税申告をした者は、次項の規定に該当する場合を除き、その申告に係る書面又は更正通知書に記載された納付すべき税額に相当する関税を、当該申告に係る貨物を輸入する日までに国に納付しなければならない。
(昭和三十年法律第三十七号 輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律)


関税については TPP や FTA 協定により、関税率ゼロまたは時間をかけて低減されています。しかし、消費税は8%から10%へ、更に上昇する勢いです。個人的な見解では、消費を冷え込ませる消費税は無いほうがいいと思いますが、それはそれとして、課税価格や関税の納付、消費税の納付につき日米間の比較をしてみたいと思います。

  1. 課税価格
    日本の課税価格は CIF(Cost Insurance and Freight=運賃保険料込み条件) で構成されていますが、米国では FOB(Free on Board=本船渡し) 価格が課税価格で Freight つまり、運賃は加算されない。米国の課税価格は日本より5-6%は安い計算になります。

  2. 関税の納付
    米国の輸入申告、関税の納付は、入港の5日前に即時引取り (Immediate Delivery) による引取り申告ができ、申告後10日までに「予定関税」を支払う。更に関税額の確定は314日後である。日本の輸入通関、関税の納付は、原則的に輸入申告時に課税される。貨物引き取り前に関税額の確定と消費税を払わねばならず、通関業者への手続き上の負担が大きい。

  3. 消費税
    米国に消費税はありません。各州毎の VAT(付加価値税) はありますが、輸入通関時には支払わない。
    日本の消費税は、輸入通関時に確定関税額と同時に支払わねばならないので、輸入者への負担が大きくなります。(販売前に支払うため) また、関税と一緒に消費税も支払うので、通関業者への負担も重いものとなります。

現在始まっている日米貿易交渉の中で米国側は、日本の非関税障壁とともに制度的な問題点~課税価格が高い (CIF) ことも問題視させていると言っております。この際、輸入拡大こそ貿易不均衡の唯一の解決策であります。課税価格を CIF から FOB に変え、消費税を輸入時でなく、実際の消費段階で課税するなどの制度改革で、米国との貿易不均衡を是正するべきだと考えます。徴税権を持つ財務省が輸入通関制度を管轄しているのだから「容易に」改革はできるはずであります。日本政府は米国が保護主義で日本は自由貿易だと言いいますが、実際は、日本こそ保護主義、岩盤規制で一部の利益を護る保護主義そのものです。

日本を本当の自由な規制緩和された開かれた貿易立国にするために、通関士ドットコムは、その先頭に立って改革の旗を高く掲げて参ります。

(注)米国議会では過去何十年にもわたって、欧州や日本と同様のVAT(付加価値税(消費税)の導入について議論が持たれて来ました。法人税や所得税に代表される直接税に比べて、消費税(付加価値税)など間接税が優れているとは見なせないという理由で、いまだに米国で採用は見送られています。

(文責:佐藤)