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ユニクロ製品が今年の1月から米国で輸入禁止に~米国の輸入規制と日本~

2021年5月31日


知的財産物件差し止め件数構成比2020年実績.gif

ユニクロ製品が今年の1月から米国で輸入禁止に~米国の輸入規制と日本~

米国税関はユニクロがウイグル人の人権侵害の強制労働による製品を米国に輸入しようとしたとさて今年の1月から米国への輸入を差し止められていると報道されています。ユニクロ側は「人権侵害の事実はない」として反論しています。

事実確認は米国税関の判断に委ねるしかありません。

ここでは二つの点に注目します。

まず、ユニクロは創業者柳井会長のもとで広島の小さな衣料品店から日本を代表する企業に成長し世界に打って出ています。柳井さんの次の発言を見ればユニクロの考え方がわかります。

日経ビジネス」(2019年10月14日号)に柳井会長がインタビューで「日本は最悪の状況」「韓国の人が反日なのは分かる」との発言が物議を醸しています。「柳井会長は日本人の民度が劣化しているという話を展開し、『韓国にみんなが喧嘩腰なのも異常ですね』『日本人は本来、冷静だったのが全部ヒステリー現象に変わっている』と語っており、さらに日本社会に対して今のままでは『この国は滅びます』などと、痛烈な批判を繰り広げたんです」(社会部記者)

また2012年に反日運動が中国で爆発しました。 中国・上海で運営するユニクロ店舗で「尖閣は中国固有の領土」などと書いた紙を中国人の店長が一時張り出しました。同社の柳井正会長兼社長は、日本経済新聞などに対し「反日デモの襲撃を避けるため、警察からの強い指示に店長がやむなく従った」などと語りました。

柳井会長の発言の真意はともかく、ユニクロ製品を売りたいがための「あやふやな対応」では世界企業としての発展には黄信号といえます。日本の経営者は自らの世界観、価値観が明確でなく自社商品が売れればいい」との立場をとる人がほとんどです。

あやふやなことが好きな日本では許されても世界的には価値観をしっかり持たない経営者とその会社は世界的な評価を得ることはできません。特に世界の人権問題、国連が危惧する問題へのあやふやな態度は企業価値を低め、世界企業としての成功は難しくなると思います。2017年の東京通関業会通関士部会の米国研修の中で、こんな話を聞きました。

米国税関が輸入木材の輸入差し止めをしました。その理由はその木材の伐採はアフリカでの児童労働で伐採された木材でした。

輸入者は木材が伐採された後に買取った輸出者から購入(輸入)したものでしたが、伐採時の違法行為もチェックすべきであると

されました。米国では人権問題に対するチェックはそれほど厳しいのです。

(注) 改正レイシー法に基づき、米国の木材・木材製品の輸入事業者は、伐採からサプライチェーン全体の合法性を確認する「義務的注意」(Due Care)に取組むことが求められており、違法性が証明された場合、罰則が課せられることになっています。

米国では、レイシー法の改正によって違法伐採対策を図っています。レイシー法は、1900年に野生生物保護法として策定され、有害な野生生物や違法に捕獲された生物種の取引を規制しました。

私は50年近く税関の輸出入通関に関わって来ましたが日本の税関では国際的な人権侵害を理由に輸入差し止めなど聞いたことがありません。日本の税関が輸入に対して大きな不正には甘く小さな間違いに厳しいのは50年間変わっていません。平成22年以降知的財産権侵害物品の80%~90%以上が中国からの輸入ですが、防止策は輸入時の現場検査を増やすだけで「中国への政治的配慮」からか抜本的な防止策は取っていません。

日本の輸出入通関制度は米国に比べて20-30年ほど遅れていると言われています。明治維新から150年以上財務省官僚支配の輸出入通関制度は不変のままです。

エコノミックアニマルとは利益のみを追求する日本企業への侮蔑の言葉ですが、残念ながら人権意識や道徳観念を持たない経営者(輸入者)と手を組んでいる財務省官僚の事なかれ主義が脈々と生き続けています。

グローバルスタンダードを目指すならば、日本でも思い切った規制緩和で米国に負けない合理的て民主的な「正しい通関制度」を再建しなければなりません。(文責:佐藤健一)