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台湾、中国のTPP加盟申請と日本の役割

2021年11月5日


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台湾、中国のTPP加盟申請と日本の役割~世界最大の経済協定で日本が指導権を取るべき~

中国と台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を相次ぎ申請しました。中国は、成長が続くアジア太平洋地域の貿易や投資で主導権を握りたいという思惑がありますが、実際の加盟にはデータを巡るルールなど中国にとってハードルは高い。

一説には台湾がTPPに加入すると中国が加入できなくなるので中国があわてて加入申請したと言われています。TPPの規定で新規加入の承認は加盟国の満場一致が条件だからです。

TPP(環太平洋経済連携協定)日本が中心となりオーストラリア、カナダ、東南アジア諸国との地域経済協定です。一方、中国、韓国、日本が中心のRCEP( 包括的経済連携)は東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国を中心に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国が参加する広域の自由貿易圏。「Regional Comprehensive Economic Partnership」の頭文字をとってRCEPと呼びます。中国が参加する唯一の大型自由貿易協定です。関税の削減などを通じて貿易自由化を促す枠組みで、20年11月に署名した各国は国内での批准手続きを進めている。9月に開かれた会合で22年1月までの発効を目指す方針を盛り込みました。

RCEPは世界のGDPや貿易額で3割程度を占める巨大経済圏です。全体として工業製品を中心に91%の品目で関税を段階的に撤廃します。RCEPの参加国は日本の貿易総額の半分を占め、政府はGDPを2.7%ほど押し上げる経済効果があると試算しています。

両協定の違いはTPPが自由貿易を守る立場から知的財産権保護や労働者保護の強制労働の禁止などです。RCEPは、「知財」「労働」がなく経済的利益に重きをおいた協定です。

中国が台湾を武力併合する意思を示すなどキナ臭い情勢の中、日本が中心になって、台湾と中国を加盟させてTPPを平和的な経済連携協定として世界平和を守る砦にすることが可能です。

中国のTPP加盟への3つのハードル

TPPはデータ流通の透明性や公平性を確保する原則を定めています。既存の多くのFTAが盛り込めなかったもので、専門家の間では「TPPスタンダード」と呼ばれている。中国は、企業や個人による国境を越えた自由なデータの流通には否定的です。データ安全法(データセキュリティー法)などで統制を強化する同国は「RCEPレベルが限界だ」との指摘があります。

2つ目は強制労働の撤廃や、団体交渉権の承認など、労働に関するルールです。ウイグル族への人権侵害が国際世論の反発を招く中で、中国はTPPの加盟交渉で難しい立場に置かれかねません。

3つ目として、国有企業への補助金や政府調達の手法など、中国国内の制度改革が必要なテーマも難しい分野です。TPPは競争をゆがめるとして国有企業を補助金などで優遇することを禁じています。習近平指導部が進めてきた国有企業の増強を続けるなら、交渉はつまずく。TPPは政府調達でも国内外企業の差別を原則的になくすよう求めるが、中国は安全保障を理由に外資系の排除を進めてきた経緯があります。

また、中国が加盟するには全加盟国の支持が必要です。マレーシア、シンガポールは加盟申請に歓迎の意向だが、日本・豪州は慎重な姿勢を見せています。メキシコもTPPは「高い基準を順守するすべての国に門戸は開かれている」と指摘。国有企業への補助などの中国の経済ルールが加盟に課題となることを暗に示唆しています。

中国は国家の独裁権力を背景に個人の自由や国境を越えたデーターの流通を規制し、国営企業を国家の補助金で育成し巨大な世界企業を作り上げました。ウィグル人の強制労働による安価で大量な製品作りなど「非自由主義、非民主的な手法で」世界第二位の経済大国にのし上がりました。

TPPへの加入は中国の国家主義的な経済を自由で競争原理に基づく自由主義、民主主義の経済に巻き込むことになります。

ぜひ、日本がイニシアチブをとり台湾、中国のTPP加入を実現し、平和な世界経済の発展を作っていきたいと切望します。

自由な競争原理に基づく経済は戦争とは相いれない「平和で発展する社会」を作り上げるからです。(文責:佐藤健一)